この時期になると、夕方が早い。
6時には、今日も暗くなっていた。
若い頃は、夏が来る前に、今年の夏は出会いとか新しい経験とかが出来る夏になるんではないかと期待していた。
夏の細かなガラスを散りばめたような光輝く海。
燦々と照りつける陽の光。
そして、長い休暇。
乾燥した風も、通り雨も、すべてが、何かのはじまる予感と思えた。
でも、私の夏はいつも平凡に過ぎてゆき、通り雨がしとしとした雨に変わり、日暮れも早くなって、夏が終わったことを思い知らされたものだった。
そんな、酸っぱい記憶だけが残っている。
この歳になると夏のはじまりの期待も予感も感じなくなり、ただ、夕暮れの早さに夏の終わりを知る。
そして、夜の長さが、誰もいない家での侘しさを淋しさをだんだんと大きくさせていくだけ。
人生においても、生まれた時を新春だとすると、夏は過ぎ、晩秋か初冬の年齢となっている今。
気持ちは、青春の頃と変わらない。
でも、体力や見た目が老いを匂わせる。
私は何をやりたくて生きてきたのか。
わからない。その時その時をただ一生懸命に生きてきた。
夕暮れが早くなってきた、今思う。
20代の頃やりたかった、映画の制作のサポート。
もう一度、やりたくなっている自分がいる。