不動産コンサルタントのつぶやき

不動産コンサルタントが商業などで思うこと

「ワークマン EC宅配全廃」のニュースに思う

2022年4月27日の日経新聞に「ワークマン EC宅配全廃」という記事がありました。

5年以内にEコマースで宅配を全廃し、店頭受取りのみにするというのです。

そして日経新聞には、

「宅配なきEC」に踏み込む

と書かれています。

 

ご存知のとおり、ワークマンはもともと現場作業者や工場作業者のブルーカラー向けの作業服・関連用品の専門店です。

高機能な商品が安価であることから近年注目を受け、新たなユーザーが増えています。

カジュアル性の高い商品を提供する「WORKMAN Plus(ワークマンプラス)」という新しい業態の店舗も展開してきています。

加えて、女性層向きの商品を中心とした店作りを行う新しい業態の「#ワークマン女子」も展開しています。

直近のIR資料によれば、ワークマンプラス372店舗、#ワークマン女子12店舗となっています。

合計944店舗を展開しています(FC店舗も含みます)。

 

そのワークマンがECの宅配を辞めるというのです。

記事によれば、

・コストが大幅に下がる

・店頭受取りによるついで買いが見込める

とし、

・現状でも顧客負担の送料がかからない店頭受取りの比率が高い

ため、顧客にも受け入れられると書かれています。

 

高性能商品が安価である理由でもあるのかな。

記事を目にして調べてみました。

ワークマンの決算資料です。

 

ワークマンの大半がFCです。

直営店舗は40店ほど。

 

FC店舗は、ワークマンから商品を仕入れてます。

原価率が47%と言えば他のアパレルとそう変わらない構造です。

でも、ロイヤリティをワークマンに払わなくてはいけません。

有価証券報告書から類推すると、FCは粗利の40%をロイヤルティーとして払っているようです。

そう考えると、FCの粗利は32%と考えることが出来ます。

つまり、1,000円で商品を売っても320円しかFC店舗には残らない。

 

そこからスタッフの人件費や家賃、電気代などを払わなければいけないのです。

これでは、いくら送料を別途とったとしても、梱包などのコストを考えると厳しいのかも知れませんね。

 

比較として、ファーストリテイリングを調べてみました。

ユニクロなどを展開している会社ですね。

こちらは、2021年8月期の決算です。

売上は、約2兆1330億円です。さすが世界中で展開しているだけありますね。

原価はというと、約1兆590億円です。

何と原価率が49.7%です!

これも分かり易くすると、お客様が1,000円で買った商品を497円で仕入れているのです。

ブランド価値でもありますね。

ユニクロなどを展開するファーストリテイリングは、ECを積極的に展開しています。

一方のワークマンは記載のとおり。

 

ECとの相性のいい商品・サービスがあります。

その一つが、粗利の高い製品・サービスが挙げられます。

リアル店舗での販売コストに比して店舗を持たないネットでは、低価格を実現できるのです。

リアル店舗より20%や30%安く提供したとしてもリアル店舗の家賃や人件費などを考慮すると粗利益は確保できるのです。

ちなみに衣料の原価率は一般的には30%前後です。

つまり10,000円の定価の服は3,000円で仕入れています。

当初は衣料などの「経験財」はECの対象商品としては不向きと思われていました。

しかし、スマートフォンの登場・浸透によりリアル店舗で商品を見て、触って、購入はネットでというショールーミングも多く行われています。

加えてEC事業者の返品制度の整備などで「経験財」をネットで購入する心理的なハードルも下がっています。

 

ファッション小売事業者は、EC用の商品やリアル店舗より低価格での販売などを行っています。

これは、原価率が低いからできることです。

リアル店舗も昔と比べて価格を下げざるを得なく、定価で売れるお店や商品は限られてしまします。

先程、定価の30%が仕入れ値と書きました。

しかし、「30%OFF」や「半額セール」などと定価から値引きして実際は売っています。

 

ワークマンは、通受価格自体が他と比べて安い。

品質もいい。

つまり、ワークマンの戦略はほかのファッション小売事業者で同様のことをしても効果はないのです。

 

ファッション小売事業者は、ECの販売比率を高めようとここ数年取組んできました。

そして、リアル店舗は「売るための場」から「プロモーションの場」に今後ますますその存在意義が変化していくでしょう。

粗利益の大きな商品がECの対象商品として相性がいいという、私の仮説がワークマンの「EC宅配全廃」のニュースから、逆説的に裏付けされたような気がします。

 

2022年5月10日