不動産コンサルタントのつぶやき

不動産コンサルタントが商業などで思うこと

リアル店舗の「これまで」その2 行商②

リアル店舗のこれからを考える上で、リアル店舗のこれまでを振り返っています。

そして前回は行商について書きました。

今回も行商で2回目となります。

 

行商は大きな存在だった?!

行商が大昔の話しではなかったことは理解頂いたと思います。

でも、買い物の手段として行商もあったけど、細々と行われていたと思っていませんか?

違います!

現在のスーパーマーケットや個人店舗などが昔から今の姿であったのではないのです。

米や酒、衣料品などはリアル店舗での販売も江戸時代から多くあったようです。

 

でも保存技術が未熟な時代、野菜や魚などの生鮮品を店舗で売る必然性がないのです。

むしろ、鮮度が落ちないように消費者に届ける方が合理的だったのです。

 


この状態は明治期になっても続きます。

1896年(明治29年)の広島県全体における常設店舗の割合は38.2%に対して、行商で小売業を営んでいる人の割合が60.3%であったとの記述もあります。

出典:廣田誠、山田雄久、木山実、長廣利崇、藤岡里圭『日本商業史-商業・流通の発展プロセスをとらえる』(2017年、有斐閣

 

いかがです、凄いでしょう。

常設店舗で働く人より、行商人の方が多いのですよ。

広島県と限定して数値ですけで。

 

昭和期まで日常の買い物では、特に野菜・魚などにおいて行商は相当程度の存在だったと思われます。

(明治期の状況のママということはないでしょうけど。)

だからこそ、京成電鉄の例のようについ最近まで「行商車輛」が残っていたのでしょう。

 

冷蔵庫の登場が行商の斜陽のはじまり

ではこの行商がなぜ廃れていったのでしょう。

一言でいうと社会の変化が原因です。

 

まず、生鮮食料品を保存するインフラが整備されたことでしょう。

先程述べた江戸時代の話しです。

保存技術・設備が発展してなかった時代には店舗にて生鮮品を扱いにくかったのです。

 

現在のどの家庭にもある冷蔵庫はいつからあったと思いますか?

大正期には日本に輸入されるようになったようです。

でも、一般家庭に普及するのは昭和40年代以降です。

1965年(昭和40年)の世帯普及率がやっと50%になっています。

90%を超えたのは1971年(昭和46年)です。

経済産業省の調査データの集計結果より)


店舗においても似たような状況でしょう。

まあ、業務用として家庭よりは先に普及したと思いますけど。

でも冷蔵庫の普及とスーパーマーケットの伸張が重なるようにも見えますね。

生鮮品を扱うには冷蔵庫の存在が大きいことは否定出来ないでしょう。

 


冷蔵庫という保存装置を備えた店舗の発現。

併せて、生鮮食料品を生産者から店舗に運ぶロジスティクスが整備。

消費者にとって、店舗に行けばいつでも新鮮な生鮮食料品を買うことが出来るのは魅力ですね。

そして、買ってきた生鮮品を家の中の冷蔵庫で保存する。

行商から毎日買う必要性が無くなってしまいました。

 


サラリーマンの増加

 

行商の衰退の理由は冷蔵庫だけではありません。

次にサラリーマンの増加です。

特に第二次世界大戦後の団塊の世代の大都市圏への人口の移動です。

その結果、核家族化が進みます。

さらに共働き世帯の増加して専業主婦の方が減少していきます。

 


そうなるとどうでしょう?

共働きで行商人から野菜などを買うことが出来なくなりますよね。

加えて、単身世帯も増加しています。

行商人が商品を売ろうとしても住まいに人がいなければ売れません。

(昼間時に売り歩く前提ですが)

 

店舗には冷蔵什器に入った生鮮品が売っています。

時を選ばず消費者は買えるのです。

 

他にも、行商を行う方の問題もあるでしょう。

農業や漁業の方の高年齢化によって行商をする人が減っていったこともあるでしょう。

 

また郊外の都市化によって、農地が減っていったこともあるでしょう。

いずれにしても、行商が街から消えていったのです。

 

行商が復活している!?

社会は常に変化しています。

「行商は廃れた」とつい数行まえに書いています。

でも復活というか、変化してまた増加しています。

移動販売です。

 

下の表は東京都における、移動販売車の営業許可件数の推移です。

(出典:国土交通省「土地白書令和2年度」より)

如何です?

2000年(平成12年)には、1,000件だったのが2017年(平成29年)には3,500件程になっています。

これは、主にキッチンカーです。


これに含まれないものとして、手引きによる移動販売もあります。

マルシェなども盛んに行われていますよね。

そうすると、上のグラフ以上に「行商」的な販売が増加しているのではないでしょうか。

 

コロナ禍をきっかけとなって、在宅ワークなどが増加・定着の傾向にあります。

また、地産地消などの取組みも盛んです。

消費者が変化していて、加えて消費の対象も変化しています。

そのような中において、現代版の「行商」が復活しているのではないでしょうか。


ということで、2回にわたって行商について書きました。

やはり、商業は社会とともに変化するのです。

変化しないと廃れていくのです。

これからのリアル店舗のあり方を創造していきましょう!

 

最後まで読んで頂いた方がいらしたとしたら、本当にお疲れ様でした。

そして、ありがとうございました。

 

2022年6月30日