不動産コンサルタントのつぶやき

不動産コンサルタントが商業などで思うこと

リアル店舗の「これまで」その3 スーパーマーケット②

商業やリアル店舗の「これから」を考えるうえで、「これまで」を見ています。

今回は、スーパーマーケットの2回目です。

前回では、

・1953年に紀ノ國屋が日本で最初のスーパーマーケットとして東京・青山に誕生

・1960年前後に青果店や魚屋からセルフサービス方式のスーパーマーケットに転換

・以降、チェーン展開

という傾向が見えてきました。

この背景には、社会の変化があったと思われます。

ということで、そのような社会の変化があったかを今回は見ていきます。

 

 

電気冷蔵庫の浸透

 

1950年代の後半、(電気製品の)三種の神器と言われるものがありました。

白黒テレビ、洗濯機、そして冷蔵庫です。

白黒テレビなんて見たことない人多いでしょう。

ちなみに、1960年代には、カラーテレビ、クーラー、車(Car)が同様の呼ばれ方をしたそうです。頭文字から3Cと呼んでいたようです。

 

それはさておき、冷蔵庫を見て下さい。

下のグラフは、冷蔵庫と乗用車の世帯普及率の推移を表わしています。

1957年からのデータで内閣府「消費動向調査」が出典元データです。

1965年に50%を超えて、1971年に90%に達しました。

冷蔵庫の普及とスーパーマーケットの伸張が私には重なって見えるのです。

 

スーパーマーケットの発生は冷蔵庫

生鮮品を保存する設備がない時代に常設店舗での購入は合理性がないと行商の回で書きました。

魚も野菜も生産地から運んで消費地に持ってきます。

そのときに保存装置が必要になります。

(江戸時代、マグロのトロは捨てられていたというのは有名な話しですよね。)

 

店舗でも同様です。

店舗に冷蔵什器がなければ、家に来てくれる行商から買う方が合理的だったのです。

それが電気冷蔵庫が店舗に置かれ、新鮮なまま売られているようになります。

 

スーパーマーケットで買った来た食材を自分の家の冷蔵庫で保存できる。

ある食材は、週に1回買えば済むようになりました。

それも、時間の余裕がある好きな時間にスーパーマーケットに車で行けばすべて揃う。

 

団塊の世代

団塊の世代」があります。

一般的には、1947年(昭和22年)〜1949年(昭和24年)生まれの人を呼びます。

第二次世界大戦後のベビーブーム時に生まれた世代です。

1年間に、260万人を超える人が生まれています。

昨年(2021年)の出生者数が84万人(厚生労働省発表)です。

如何に多くの人が生まれたがわかりますね。

その方々は、1960年には中学生になっています。

当時は、高校進学をしない人も多くいました。

大学への進学率も現在ほど高くありません。

この団塊の世代が1960年後半から社会に出ていくことになります。

 

都市への人口の集中

この団塊の世代は何処にいくのでしょう。

下のグラフは日本の人口の推移です。

国勢調査のデータです。

市部(人口5万人以上の市)と郡部(人口5万人未満の地域)の地域別で作りました。

市部は第二次世界大戦時には減少していますが、戦後大きく増加しているのがわかります。

東京都の人口も参考に図に入れました。

一見して、市部での人口の増加がわかります。

逆に郡部では1950年以降減少しています。

 

これがよく言われる都市への人口の流入です。

進学や働く場を求めて地方から都会に人が移動しているのですね。

団塊の世代」も多くが都会に行くことになったと思われます。

 

ちなみに、「団塊の世代」は、日本経済に「人口ボーナス」をもたらします。

働く世代の人口が増加すると、消費のマーケットボリュームが増加します。

働き手が多いので生産力も増加します。

すると収入も増えて、さらに消費も増加するという流れをつくります。

日本では、高度成長期に「人口ボーナス」期が重なり、経済が大きく発展しました。

「人口ボーナス」については、機会がありましたら詳しく書きたいと思います。

 

核家族

一般に核家族化が戦後進んだと言われています。

これも国勢調査からのデータからも類推されます。

下のグラフは、1950年(昭和25年)から1980年(昭和55年)までの人員別の世帯数の割合の推移です。

1950年では、3人世帯、4人世帯、5人世帯、6人世帯とほぼ同じです。

8人以上の世帯も多くあったのですね。

5年以上の世帯は、1965年から一貫て減少しています。

1965年は、団塊の世代が高校を卒業し始めるころとなります。

逆に1人世帯、2人世帯は増加し続けることとなります。

 

スーパーマーケットの伸張の背景

スーパーマーケットの発生=冷蔵庫と書きました。

でもそれ以外にも多くの背景があると思います。

 

対面での販売ではなく、商品を自分で見て、選んで、レジで精算するというのも魅力でしょう。

加えて、八百屋、魚屋、豆腐屋などと何店舗も回らなくても、1店舗ですべて夕食の材料が揃ってしまいます。

とても便利ですよね。

 

でも、背景には、都市でのサラリーマンとして働く人の増加が大きいのではないでしょうか。

行商から買うには家に誰かいないといけません。

少人数の世帯の増加、それも都市のサラリーマン。

これが背景にあるのでしょう。

 

まとめ

スーパーマーケットという新しい形態の店舗。

それは、都市への人口大移動、核家族化、共働き世帯の増加など多くの社会の変化に対応して浸透していったのです。

商品の流通の整備や家庭での冷蔵庫や自動車などの道具の存在も大きいですよね。

生鮮産品を新鮮なまま店頭に並べるインフラが整備されたのはスーパーマーケットが誕生し、伸張していく前提としてあったのでは無いでしょうか。

それと併せて、都市への人口集中、サラリーマンの増加、核家族化、共働き世帯の増加、車社会化という社会の変化も大きな要因だったと思われます。

 

同じことがEコマースの伸張でも言えると思います。

今、どこにいても何時でもインターネットに繋がります。

このインフラがあって、Eコマースが成立します。

でも、それだけではないでしょう。

Eコマースが伸張している理由、それは消費行動の変化も大きいでしょう。

Eコマースも伸張については機会があればゆっくりと検証したいと思います。

 

ということで、いつもながらですが、「社会の変化が商業にも変化をもたらしている」ことを言いたいと思うます。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。

コロナもまた蔓延し始めています。

皆様、身体と心、どうぞご自愛くださいませ。

 

2022年7月12日(火)

 

最後に宣伝です。

2年前の夏に書きました。出版されたのは12月でしたけど。

働く場の意味とか今の社会を予想したのですが、意外と当たっていると思います。

先日エゴサーチしたところ、Amazonでも「店舗・販売管理」分野で16位!

気になったら、ぜひ。

そうそう、杉並区などのの図書館にも置いてあるみたいですので、そちらでもどうぞ。